相続人が複数いる場合に注意すべきこととは?

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相続人が複数いる場合に注意すべきこととは?

相続人が複数いる場合、単独相続では発生し得ない問題が生じることがあります。

これらの問題を回避するには、事前の対策が重要です。

本記事では、相続人が複数人いる場合の注意点と対策について解説します。

単独相続との違いとは

単独相続では1人の相続人だけが被相続人のすべての財産を相続します。

これに対し、相続人が複数いる場合は、遺産分割協議などを経て、遺産を分割した後に相続が行われます。

相続人が複数人いることで、手続きが複雑化し、それに伴う問題も発生しやすくなります。

相続人が複数いる場合の注意点

相続人が複数いる場合、遺産分割協議が難航することに加え、税務上も単独相続にはない特有の注意点があります。

これらの問題は、予期せぬ税負担などにつながる可能性があるため、事前の把握と対策が必要です。

以下で注意点についてみていきましょう。

注意点①相続税の特例や控除が使用できないことがある

相続人が複数人いる場合、相続人の間で遺産分割協議が行われます。

遺産分割協議が相続税の申告期限までにまとまらず、財産が未分割のまま申告を行うと、大きな節税効果を持つ特例や控除が適用できません。

特に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった、納税額を大幅に減らすことができる特例は、遺産分割が確定していることが適用要件となっています。

これらの特例が使えない場合、一旦、本来よりも高額な相続税を納付しなければならないというデメリットが生じます。

注意点②連帯納付義務によりトラブルになることがある

相続税には、連帯納付義務というルールがあります。

これは、相続人全員が、他の共同相続人が納付すべき相続税額についても、連帯して納税の責任を負うというものです。

たとえば、他の相続人が相続税を滞納した場合、税務署は連帯納付義務を負う他の相続人に対して、その滞納分の納付を請求できます。

なお、各人に請求できる上限額は、その人が取得した財産の価額から支払いを行った相続税額を差し引いた金額までとなります。

この制度により、仮に自身が相続税を支払っていた場合にも、一部の相続人の滞納によって、突然の納税請求がきて、トラブルに発展することがあります。

注意点③税務調査の対象になることがある

相続人それぞれが個別に相続税の申告を行った場合、申告書の内容や財産評価の根拠が統一されていないことで、税務署からの指摘を受けやすく、税務調査の対象となるリスクが高まります。

特に、同じ不動産や非上場株式を異なる評価額で申告した場合や、遺産分割協議書の内容と申告書の内容に整合性がない場合などに、税務署は申告内容の確認が必要と判断しやすくなります。

このため、共同相続人が個別で申告を行う際は、情報の統一が重要となります。

あらかじめできる対策とは

相続人が複数いる場合に発生する問題は、事前の対策によって、リスクを大幅に軽減できます。

以下でそれぞれ確認していきましょう。

対策①遺言書を利用する

遺言書は、相続人が複数いる場合のトラブル回避に有効な手段です。

被相続人が遺言書で、「誰にどの財産をどれだけ相続させるか」を具体的に指定しておくことで、遺産分割を比較的スムーズに行うことができます。

これにより、相続人間の争いを未然に防ぎ、財産の帰属を迅速に確定させられるため、遺産分割の確定を早期に完了させ、特例などを利用できるようになります。

対策②申告期限後3年以内の分割見込書を利用する

遺産分割協議が申告期限までに間に合わないことが確実な場合、分割未了申告を行います。これにより、一旦は特例が適用できない状態で申告・納税を行うことになります。

しかし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することで、その後遺産分割が成立した際に、特例を遡及的に適用し、払いすぎた税金を取り戻すことが可能です。

対策③遺産の分割を工夫する

遺産分割の方法を工夫することで、連帯納付義務のリスクを回避しやすくなります。

相続税は現金による一括払いが原則とされているため、各人が納税資金を確保している必要があります。

遺産分割協議を行う際に、その相続人が納付すべき相続税額に対して、支払い能力があるかを確認しておくことが重要です。

特に不動産などを多く相続する相続人は、納税の資金を用意しにくいことが想定されるため、遺産分割の際に配慮を行うことでリスクを回避しやすくなります。

対策④相続税の申告を共同で行う

相続人が複数いる場合、各相続人が個別に申告するのではなく、共同で申告書を作成し、提出することが推奨されます。

共同申告を行うことで、財産評価の基準や、適用する特例についての情報が統一されるため、税務署からの指摘を受けにくくなり、税務調査のリスクを軽減しやすくなります。

まとめ

相続人が複数いる場合、遺産分割の難航や、それによる特例の適用不可、連帯納付義務といったさまざまなリスクが伴います。

これらのリスクを回避するためには、事前対策が重要になります。

相続税に関してお困りの際は、専門の税理士までご相談ください。

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