生前贈与を行うメリット・デメリットを解説
生前贈与とは、財産を持つひと(贈与者)が生きている間に、子どもや孫などに無償で財産を渡すことです。
相続発生前に財産を分け、トラブルを回避する動きがよく見られます。
生前贈与には、さまざまなメリットがある一方で、少なくないデメリットもあるため注意が必要です。
今回は、生前贈与の主なメリットとデメリットを整理しながら、実施する際の注意点についても解説します。
生前贈与の概要
生前贈与とは、財産を持つひとが自分の死亡前に家族や親族、特定のひとへ財産を無償で渡す行為です。
一般的には、相続税の節税や、家族間のトラブル予防を目的として行われます。
現金や不動産、有価証券など幅広い財産が対象となります。
民法上の「贈与契約」
生前贈与は、民法で定められた「贈与契約」に該当します。
贈与契約は、贈与者が無償で財産を与える意思を示し、受贈者がそれを受け取る意思を示して成立する契約です。
口頭でも成立はしますが、トラブル防止のためには書面を作成するのが理想的です。
税法上の「贈与税」の対象
生前贈与を行うと、その財産は原則として贈与税の対象になります。
相続税の課税逃れを防ぐため、亡くなる直前3年以内の贈与は「相続財産に加算」されるルールもあります(暦年課税を選択している場合)。
暦年課税・相続時精算課税の違い
生前贈与を行う際は、「暦年課税」「相続時精算課税」のいずれかの方式を選ぶ必要があります。
暦年課税は、毎年の贈与額に対して贈与税が課される基本的な制度です。
年ごとに非課税枠が設けられており、少しずつ計画的に贈与するのに適しています。
贈与金額が1年間110万円以下であれば、申告不要です。
一方で相続時精算課税は、60歳以上の親や祖父母が、18歳以上の子や孫に対して贈与を行う際に選べる制度です。
累計2,500万円までの贈与について、贈与税がかかりません。
大きな金額を一括で移転したい場合に適しています。
生前贈与を行う主なメリット
生前贈与には、相続時には得られない利点があります。
- 相続税対策につながる
- 早い段階で資産を有効活用してもらえる
- 相続トラブルの防止になる
- 非課税制度を活用できる
それぞれ確認していきましょう。
相続税対策につながる
毎年110万円までの贈与であれば、基礎控除が適用され贈与税は課税されません。
数年かけて繰り返せば、将来の相続財産を減らせるため、結果的に相続税の負担軽減につながります。
早い段階で資産を有効活用してもらえる
子どもや孫が結婚・出産・住宅取得などライフイベントに直面したときに、必要な資金を渡せます。
生きているうちに直接感謝の気持ちを伝えられる点も大きなメリットです。
相続トラブルの防止になる
相続は、親族間の関係が悪化しやすい場面です。
遺言書や贈与契約書などで内容を文書に残せば、後々の証拠にもなり、トラブルを防ぎやすくなります。
生前贈与を行う場合は、「なぜこのひとに贈与したのか」「他の家族とのバランスはどうするのか」などを明確に説明するのが重要です。
非課税制度を活用できる
以下のような特例を利用すれば、一定額まで非課税で贈与できます。
- 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
- 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置
- 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
それぞれ制度の利用には一定の条件や手続きがあるため、事前確認が必須です。
生前贈与にともなうデメリット
一方、生前贈与には注意すべき点やリスクもあります。
- 贈与税の負担が発生する
- 贈与後に財産を取り戻せない
- 特別受益として扱われる可能性がある
- 制度変更の影響を受けるリスクがある
それぞれ確認していきましょう。
贈与税の負担が発生する
基礎控除額(年間110万円)を超える金額を贈与した場合、贈与税が発生します。
税率は贈与額が増えるほど高くなり、最大で55%に達する場合もあります。
贈与後に財産を取り戻せない
贈与契約が成立すれば、その財産は原則として贈与者の手元には戻りません。
老後資金として必要だった場合などでも、贈与後は自由に使えなくなります。
特別受益として扱われる可能性がある
相続の際、他の相続人から「生前贈与は不公平だ」と主張され、特別受益とみなされる場合があります。
公平性を意識した贈与の設計が重要です。
制度変更の影響を受けるリスクがある
贈与に関する税制は定期的に見直しが行われています。
将来的なルール変更により、現在よりも不利になる可能性もあるため、情報収集が欠かせません。
生前贈与を成功させるための注意点
生前贈与を効果的に行うには、以下のようなポイントを押さえる必要があります。
- 贈与契約書を作成し、証拠を残す
- 贈与の目的や意図を家族と共有する
- 年間110万円の基礎控除枠を有効に活用する
- 大きな贈与をする場合は、税理士など専門家に相談する
- 将来の生活費とのバランスを考慮して、無理のない範囲で行う
生前贈与を検討する際は、「つもり贈与」に注意してください。
つもり贈与とは、形式的には贈与したつもりになっていても、法律上は贈与が成立していない状態です。
【具体例】
親が子ども名義の通帳を作り定期的に入金しているものの、通帳や印鑑は親が管理しているのであれば、もはや贈与は成立していない
法律上の「贈与」は、贈与者と受贈者双方の意思と実態が伴って、初めて認められるという点に注意してください。
まとめ
生前贈与は、相続税対策や資産活用の観点で便利です。
一方で、贈与税の負担や将来の生活への影響など、慎重な判断が求められる面もあります。
制度の活用には知識と計画が欠かせません。
贈与を検討する際は、事前に家族で話し合い、必要であれば税理士など専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。
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